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宝塚歌劇宙組東京公演『王家に捧ぐ歌』感想(1) [宝塚歌劇]




グランド・ロマンス『王家に捧ぐ歌―オペラ「アイーダ」より―』

2015年8月15日(土) 東京宝塚劇場 11:00開演

脚本・演出/木村信司
作曲・編曲/甲斐正人
音楽指揮/佐々田愛一郎(宝塚)・御崎惠(東京)
振付/羽山紀代美・竹邑類・麻咲梨乃・百花沙里
ファイティング・コーディネーター/渥美博
装置/太田創
衣装/有村淳
照明/勝柴次朗
音響/大坪正仁
小道具/西川昌希
歌唱指導/やまぐちあきこ
演出補/大野拓史
演出助手/樫畑亜依子
衣装補/加藤夏美





朝夏まなと、宙組トップスターお披露目公演が東上しました!

6月に大劇場でも観劇しましたが、まぁ様(朝夏)のあまりに眩い爽やかなトップスターの光に、すっかり虜になってしまったワタクシ。東京公演もいそいそと駆け付けてしまいました…。

12年ぶりに再演された『王家に捧ぐ歌』。当時はラダメスを演じた湖月わたるのあまりの男らしさに悶え、アイーダを演じた安蘭けいの可憐さと歌唱力に感激し、アムネリスを演じた檀れいの圧倒的な美貌とオーラに感嘆し、ファラオ(箙かおる)とエチオピア王・アモナスロ(一樹千尋)の半端ない存在感に感動したものでした。

そして、2015年。戦後70年目の夏という節目に、これ以上にない配役がそろった今の宙組でこの作品が再演できるタイミングに、不思議なめぐり合わせを感じます。本当に、「今」しかできないタイミングだったなぁと思います。

「争う」とは何なのか?「闘う」とは?「平和」とは?そして「希望」とはいったい何なのか…。

ある人にとっては「希望」でも、別の人にとっては「絶望」なのかも知れない、ある国にとっては「平和」でも、別の国にとっては「悲劇」なのかもしれない…。いつの時代も、人間は矛盾を抱え続ける生き物です。

それでも結局、この物語の根底に一貫するのは演出家の言うとおり「愛」なのです。

ただ、ひたすらに誰かを思う「愛」。まっすぐな愛、報われぬ愛、親子の愛、友愛…。だからこそ、この物語は、深く人の心をとらえるのだと思います。(時折、突如として出現するダイナミックかつアトラクションチックな演出だけではないはずであることだけは断言します)

今から4500年以上も昔、古代エジプトとエチオピアの戦争の狭間に芽生えた、愛の物語。

その中核をなすをのは、勿論、主役であるラダメス(朝夏まなと)とアイーダ(実咲凛音)。トップコンビである2人がその中核をなしたからこそ、その「愛」がより深く、強く際立って伝わってきました。

初演でラダメスを演じた湖月わたるとはまた異なるラダメス像を造形した朝夏。

初演の湖月ラダメスには、たたき上げの軍人として野心と、愛した人を絶対に離さないというワイルドな色気を感じました。

一方、朝夏ラダメスは、生まれながらの家柄の良さと、高潔な理想を持った貴族の軍人、そして自分に光を与えてくれた女性を守り抜こうという一途な思いを持つ純真さを持った青年、というイメージ。

「この広い広い世界で 私は孤独だ…」と歌うシーンが何度かあります。軍人として、戦士として戦い続けたラダメス。何のために戦うのか、何のために生きるのか…彼が闇に迷いそうになった時に、出会った光…それがアイーダだったのだと、朝夏の歌声にはそう納得させる説得力がありました。

ええ、何が言いたいのかと申し上げますと、


まぁ様に、超絶胸キュンじゃったっっ!!!(*ノωノ)


…ということです(真顔)。

どれくらい胸キュンだったかと申しますと、キャピキャピと観劇報告をするワタシを見たカンゲキ仲間さんに、「…とろりんさんて、意外と浮気性ですね…[たらーっ(汗)](瀬戸くんかわいそう…)」と軽く引かれ、瀬戸かずや君に同情が寄せられる程度に(笑)。

でもね、本当に、想像以上に朝夏のラダメスが素晴らしかったのです。イケメンということは絶対条件として(笑)、ラダメスとしての舞台のたたずまいに、惚れ込んでしまいました。

冷静沈着な戦士としての精悍な表情、孤独な戦場に一人たたずむ時の虚無な表情、愛する人に向ける、真摯なまなざしと甘く優しいまなざし、追い詰められてよろめく表情、全てに絶望した遠いまなざし、全てを受け入れ、覚悟した穏やかな顔、アイーダを抱きしめる時の涙…。

いやもう、


こんな男性に愛されたいっっ!!!


…と、真剣に思いました(笑)。

そんなわけで、今回も思いついたことを箇条書きに書き留めておきます。時系列などバラバラで読みにくいことと思いますが、ご容赦ください。





★この公演から宙組生となった真風涼帆。アイーダの兄・ウバルド役。ラダメスとアイーダ、そしてエジプトとエチオピアを激動の渦に巻き込んでいく役割で、第1幕と第2幕、おまけにフィナーレの幕開きを担うというなかなかに重要なポジション。押し出しも強くて、観客を一気に物語の世界へと引き込む力を持った芝居でした。

★死の船に乗って甦るラダメスとアイーダ。この時からして居住まいが秀逸です。動きはするものの、意思を持っていないかのようにあくまでも透明な瞳。口元はわずかに微笑んでいるように見えなくもないけれども、果てしない遠い世界を映し出している瞳。2人の周囲だけが穢れのない浄化された空気に満ちているような。朝夏も実咲も、その空気感の出し方が本当に素晴らしかったです。

★ラダメスとアイーダが銀橋で抱き合った後、ふっと背中を向け、ラダメスは上手花道へ、アイーダは下手花道へと分かれ、それぞれスッポンからセリ下がります。そこから本舞台は4500年前のエジプトへ。初演の頃は何となしに観ていた展開ですが、『エリザベート』のような死後の世界から4500年前の「生きていた世界」への展開が自然で、感心しました。

★死の世界の住人として登場したラダメスがいったん花道でセリ下がり、再び同じ花道からセリ上がって今度は4500年前のエジプトに生きた青年軍人として登場する…という演出も、よく考えられていたなぁ。

★また、アイーダも、一度セリ下がった下手花道から再びセリ上がって登場する演出。木村先生、良い仕事してたんですね!(←上から目線でスミマセン)

★さぁさぁ!ラダメスの登場ですわよ奥さん!!「エジプトは領土を広げている」を歌いながら銀橋を渡る朝夏が、もうもう素敵過ぎた!!

★先ほども書きましたが、初演の湖月が野心むき出しの情熱で歌い上げたのに対して、朝夏は育ちの良い青年武官、といった風情。高潔な志と熱い魂を、その静謐な瞳に潜ませていて、オペラ越しに蕩けておりました(笑)。

★ラダメス、アイーダ、そしてアムネリス(伶美うらら)の対峙。控えめながらも芯の強さを感じさせる実咲のアイーダ、「造りし神も微笑む」美貌を誇る伶美のアムネリス。この2人の娘役が同時期に宙組にいたこともまた、奇跡と言って良いかもしれません。

★その美貌は誰もが認めるところながら、歌に課題が残る伶美。大劇場公演の時は文字通りジェットコースターのような歌唱で、地声では力を込めて歌うのに裏声になると途端にスカスカになるため、何度か座席から転げ落ちそうになりました(苦笑)。しかし、やはり2ヶ月間ぶっ続けでの公演で喉も鍛えられたのでしょう。東京公演では地声だけでなく裏声も何とか綺麗に出るようになっていましたし、そのバランスも良くなっていました。

★エチオピア遠征の将軍に選ばれたラダメスは、歓喜の咆哮をあげます。ここも、まさに「雄叫び」と言うに相応しく「うおおおおぉぉぉ!!」とワイルドに拳を突き上げていた初演の湖月に対して、朝夏は「ううぅいえぇぇぇ!!」と、あくまでもエレガントな咆哮でした。咆哮ひとつとっても、それぞれの個性がにじみ出ていて興味深いです。

★エチオピアとの戦闘の場面。ここで「♪この広い戦場で 私はなぜか孤独だ♪」と歌う朝夏が秀逸です。幾たびも幾たびも立ち向かい、戦い続けたであろうラダメス。彼が見てきた戦場が、まるで脳裏に浮かんでくるようでした。乾いた空気、絶え間ない怒号と剣の交わる音、その中で陥る、戦い続けた者しか知りえない「無」の感覚…。そんなものを感じ、彼がこれまで抱き続けてきた闇に突然気づかされ、胸を衝かれました。

★だからこそ、彼が歌い継ぐ「♪ああそうだ、あの人と出会うまでは アイーダ! 強き光よ♪」が、これ以上はない説得力をもって、心に迫ってくるのです。


ぐぎゅううぅぅぅぅ。(←胸が押しつぶされる音)(←カンゲキ通信名物)


★エジプトが戦いに勝ち、軍隊が凱旋する場面。麻咲梨乃振付のダンスが、すごくすごくカッコ良かったのです!!

★真っ暗な舞台の中、まず、一人で踊るケペル(愛月ひかる)が照らされ、次のタイミングでメレルカ(桜木みなと)と風馬翔(だと思う…)が照らし出されて…というライティングもカッコよくて、この場面はアドレナリン放出しまくりでした(笑)。右手で拳を作り、左胸をドンドン!とたたく振りが男らしくて、素敵でした!

★輿に乗ってラダメス登場。輿を降りて本舞台前へ進み、さっとマントを翻します。もう、その一連の動きすらも雄々しくて優雅で!!

★手足の長さを生かした伸びやかなダンスが持ち味のひとつでもある朝夏。この作品では、フィナーレ以外ではほとんど踊っていません。だからこそ、一場面、一場面の身のこなしや仕草は堂々としていて、それでいて美しくなくてはいけません。朝夏は難なくクリアしていました。本当に、ここまでセンターが似合う男役だとは想像以上の収穫でした。嬉しくて幸せな発見です。

★そして!『王家に捧ぐ歌』でしか見ることのできない、宙吊りのファラオ!!(≧▽≦)

★鷲のゴンドラに乗って、荘厳な空気に乗って、舞台天井からファラオが降りてくる姿は…何度見ても肩の震えが止まりません。

★そんな何とも言えない空気すらも、圧倒的な存在感と歌唱力で引き込んでしまうファラオ役の箙かおる。エチオピア王アモナスロを演じた一樹千尋とともに、初演でも同じ役を演じました。今回はさらに、神の子であるファラオとしての威厳だけでなく、父としての深い思いも感じることができました。

★ラダメスの願いに、「これは賭けだ」と強く言い切ってその願いを受け入れる場面も、ファラオの強い決意と、ラダメスへの深い信頼感を感じさせました。ファラオ…!!(感涙)

★初演から12年…宝塚に、箙と一樹が在籍していたことも、今回の再演が叶った奇跡のひとつですね。やはり専科の存在意義はやはり大きいです。このような偉大なるバイプレーヤーを育て、大切にすることも、歌劇団全体の課題のひとつであると思います。





思いのほか長くなってしまいましたので、第1部でいったんきりますね~。

いやぁ…それにしてもまぁ様…素敵じゃった…[黒ハート](←まだ言ってる)。


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