『ifi (イフアイ)』 Aバージョン感想 [蘭寿とむ]
青山劇場
Aバージョン:2014年9月5日(金)~14日(日)
作・演出/小林香
音楽/スコット・アラン、扇谷研人、堀倉彰、KENSHU(illxxx Records)、SUPA LOVE
編曲・音楽監督/扇谷研人
映像・空間監督/東市篤憲(A4A)
振付/SHUN、ケント・モリ、エイドリアン・カンターナ、ANJU、黒須洋壬、ティム・ジャクソン、chaos
照明/高見和義
音響/山本浩一
美術/土岐研一
衣裳/伏見京子
―映像制作-
映像プロデューサー/堤俊典(EPOCH inc.)
映像プロジェクション/新谷暢之(PRISM)、高弊俊之(Orihalcon)、筒井真佐人(Argue inc.)
CG/山口崇使、小張泰洋(Triple Additional)、山口正憲(REEL VISION)、松田圭太(ricefield)、渡辺祐貴(ricefield)、三木良太(ricefield)、西平直人/佐藤りか、田中絵里、種村博善、福田香織(A4A)
【出演】
蘭寿とむ
パク・ジョンミン
ジュリアン(Aバージョン)
ラスタ・トーマス、白河直子、辻本知彦、ストーリーボードP、佐藤洋介(Aバージョン)、ケント・モリ
関川慶一、橋田康、HIROMI、NAMIJ、アレクセイ・ジェロニモ、ライアン・カールソン
【演奏】
音楽監督・キーボード/扇谷研人
音楽監督助手・キーボード/堀倉彰
ギター/オオニシユウスケ
ベース/山田章典
ドラム&パーカッション/新村泰文
ヴァイオリン&ヴィオラ/須原杏
【あらすじ】
現代のニューヨーク。単館系の映画作品でヒット作を上げていた映画監督ユーリ(蘭寿とむ)は、恋人でありカメラマンのヒロ(ジュリアン)と共に住んでいました。ヒロは将来についてきちんとユーリと話したいと考えていますが、仕事に一生懸命なユーリは取り合わず、「このままでいいじゃない」と笑います。
ある夜、ヒロの弟(パク・ジョンミン)が経営しているグロッサリー・ストア「THIS or THAT」での取材帰り、ユーリとヒロは若者グループの抗争に出くわします。映画制作のネタになると、ヒロの静止を聞かずにカメラを回したユーリ。その結果、彼はユーリの目の前で命を奪われます。
「もしあのとき、撮影を止めていたら」。もし、こちらの選択をしていたら、もし、あちらの選択をしたら・・・。ヒロの死後、ユーリは何ひとつ自分の意志で決められなくなり、「THIS or THAT」 に出入りする占い師(ケント・モリ)の占いに依存するようになります。
自分の意志を亡くしたユーリに、占い師はある提案をします。「もし、自分が…"ifi"の世界に興味はないか」と。
あの時とは別の選択をして、ヒロを取り返しに、「ifi」の世界へ飛び込むユーリと、彼女を追いかけるヒロの弟。
その世界は、かつてユーリが制作した映画「マスカレード」「エストゥーディオ」「キャバレティスト」「オルフェ」と同じ世界観を持つ空間。ユーリは自分で、「THIS or THAT」の選択肢からひとつを選んでいきます。
そこでは、「THIS or THAT」に集う人間たちが登場人物。娘を亡くした夫婦(白河直子、アレクセイ・ジェロニモ)。かつてパートナーとして信頼しあいながら、友情に亀裂が入った作曲家(辻本知彦)と作詞家(ライアン・カールソン)。2つの愛に苦悩する男(ラスタ・トーマス)と、気持ちを秘めて彼を見守る友人(佐藤洋介)…。
彼らとともに「ifi」の世界を彷徨うユーリは、ついにヒロとめぐり逢います。「あなたと生きたい」と訴えるユーリに、「あなたは生きて」となだめるヒロ。2人の選択は…。
【カンゲキレポ】
なんとも不思議な世界でした。演出の小林さんは、現実と想像が交錯する世界の中に登場人物を投げ込んで、その世界の橋渡しをするのが主人公…という設定がお得意なのかな?昨年観劇した『ロコへのバラード』も、演出も人物も、同じような設定でした。(その時のレポはコチラから)
『ロコ~』の時は、その世界を媒介するのが「本」という客観性のある設定だったのに対して、今回は「個人の意志」という、非常に曖昧かつ、客観的にはなかなか伝えられないもの。そして主人公のユーリ自身が、すでに「意志」を半ば手放した状態にあります。
取り戻せない時間と、失われかけた意志の中で交錯する世界は、時に悪夢のようで、時に美しい夢のようで、時に白昼夢のようで…。観れば観るほどとらわれてしまう、不思議な感覚でした。
開演前、すでに緞帳は開いていて、舞台中心に大きな六角形の透明のビニール板のようなものは設置されています。その中央に、今回の舞台のタイトル「ifi」と大きく書かれていて、「f」を軸に、まるで文字自体が秒針のように、チクタク、チクタク…と回転しています。
その文字盤の向こうには、白い大きな階段。中心はうがっていて、そこからも出演者が出入り出来る仕組みになっています。
照明が落ちて、まるでオーロラのような極彩色の光に包まれて、真っ白な衣裳に身を包んだ12名の男女が、文字盤の向こう、大階段の中心を囲むようにして浮かび上がります。これは、ぞれぞれが星座という位置づけなのかな?
そして中心でポーズをとって登場するのが、蘭寿とむ。そのまま、ヒロ役のジュリアンとデュエット。
女優・蘭寿とむの初めての相手役(笑)、ジュリアンは、とても情感の深い歌声で、素晴らしかったです!ジュリアン、君がらんとむの初めての相手役で、良かった!
Aバージョンで描かれるのは、ユーリと同じく「THIS or THAT」に通い、占い師に判断を委ねる3組の人々。
幼い子どもを失った夫婦(白河直子、アレクセイ・ジェロニモ)。友情に亀裂が走った作詞家と作曲家のコンビ(辻本知彦、ライアン・カールソン)。そして互いへの想いに苦悩する2人の男性(ラスタ・トーマス、佐藤洋介)。
それぞれの葛藤がダンスと音楽、そして映像で表現されていきます。ユーリはその都度、ある時は牽引者、ある時は目撃者、そしてある時は誘惑する者として登場します。そして最後は、ユーリ自身が意志の選択を迫られる…。
速報でもちらりと感想を述べましたが、クラシックバレエ、モダンダンス、ヒップホップ、ストリートダンス、ジャズダンス、コンテンポラリーダンス…あらゆるダンスのジャンルからあらゆる才能と実力が結集した、奇跡のような舞台でした。その中で踊る蘭寿は、やはり「宝塚のダンス」を極めた人なのだなと感じました。
特に釘付けだったのは、白河直子さん!身体中の全ての関節、全ての筋肉を意識させるような動きは、そのひとつひとつに何か特別な意味があるに違いない、それを読み取らなくては、と、観ているこちらがとても集中します。それでいてリフトも美しく、体重を感じさせない軽やかさは素晴らしい!
そしてラスタ・トーマス。どんなに回転しても、どんなにジャンプしても、身体の軸が絶対にぶれない!本当に美しい男性舞踏だと思いました。相手役の佐藤洋介も素晴らしかった!2人がユニゾンで高い跳躍を見せる場面では、滞空時間の長さとジャンプの美しさに圧倒されました。友人が「まるで比翼の鳥のよう」と評したように、2人だからこそ見せられる世界が成立していて、感動しました。
辻本知彦、ライアン・カールソンも素晴らしかった!一度は仲違いした2人が再び手を取り合う場面で、少しだけユニゾンで踊るのですが、その躍動感といったら!これは男性舞踏家でないと出せない空気感だなぁと感嘆しました。
そして、蘭寿とむ。
らんとむに至っては、ダンスがどうこうと言うよりも、とにかく宝塚では絶対に観られなかった「女優・蘭寿とむ」の姿が新鮮で新鮮で、それだけで大喜びでした(私が)。
特にですね!(力説)
劇中で映し出される、ユーリの映像(←ヒロが撮影した、という設定)の、超絶可愛らしさといったら!!
「このバスタオルは2人で買ったんだよね…捨てられないな~」とバスタオルを抱きしめるらんとむ。
食事中に、ものを落としてしまうおっちょこちょいならんとむ。
テレビを観ながら、膝をかかえて笑うらんとむ。
ぐっすりと寝込んだ、無防備な寝顔のらんとむ。
…我が人生に、一片の悔いなし…!!(あ、ケント氏と同じ事言っちゃったw)
あ、もちろんパフォーマンスも凄いです!!白い膝丈タイトワンピースであそこまで踊れる女優がいるだろうか、否!
でもやっぱり、蘭寿とむの真骨頂は、ラストのヒロとのシーンですよね…。あんな綺麗な透き通った瞳で見つめられたら、誰でも心揺さぶられますよね…。
***
ああ、お伝えしたいことはいっぱいあるのですが、何とも言葉に表現するのは不思議過ぎる空間と世界観で…。今日からBバージョンが始まりますが、Aバージョンとは全く正反対の展開になるのかな?それとも、もうひとつの展開が待っているのかな…?
まるで媚薬のように観る者の心を惹きつけて放さないダンス・アクト。蘭寿ファンだから言うのではなく、観て良かった!!これだけあらゆるジャンルからダンスのスペシャリストが集結するステージもそうないと思います。
こんばんわ
そうそう ”ダンスがどうこうと言うより” 蘭寿さんの女優部分のすてきさかわいさに”ひいいいいい”で終わりました。
やわらかくて繊細でしたね。
Bはどんなでしょう? どんなでも楽しみですが うってかわってちょっと男子っぽい蘭寿さんも久しぶりに などと個人的に期待しますが もう本日から始まったのですよね。
今でも ラストタイクーンの最後の二曲を思い出すとじ~んとなりますが 卒後から4月で舞台上の蘭寿さんと再開 本当にありがたいことですね。
by 茶とんび (2014-09-17 23:19)
茶とんびさま
こんにちは!コメント、ありがとうございます。
本当に…予想をはるかに超えた素敵さ、可愛らしさでしたよねー!
Bバージョン、どんな展開が待っているのか、どんな演出になっているのか…まったく想像がつきませんね。でもきっと、「女優・蘭寿とむ」の新たな一面を見られるのではないかとワクワクしています。
(プログラム写真のスーツや黒ドレスは…見られるのでしょうかね?^^;)
by ★とろりん★ (2014-09-18 12:45)