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劇団四季 『リトルマーメイド』 [そのほか舞台]

2015年12月9日(水) 四季劇場・夏 18:30開演


劇団四季ミュージカル『リトルマーメイド』を観劇しました。

四季の舞台を最後に観たのは…『エビータ』(2010年2月)以来、何と5年ぶりの事です。大井町にできた四季劇場・夏に来るのは初めて。四季の専用劇場は、「演劇(ミュージカル)を上演する」という目的を第一に設計建築されているのがよく分かりますね。

作品は、1989年に公開されたディズニー映画「リトル・マーメイド」をもとに製作され、2008年に舞台化。日本では劇団四季によって2013年からロングラン公演中。2016年10月以降は、名古屋でもロングラン開始が予定されています。


【あらすじ】

海の王・トリトンには7人の美しい娘の人魚がいます。その中でも末娘のアリエルは、鈴を転がしたような愛らしい声と美しい歌声の持ち主。アリエルは海の上の世界に興味を持っていますが、トリトンは好奇心旺盛な娘を心配していました。

ある日、船を見つけて海上へ顔を出したアリエルは、ハンサムで勇敢な人間の青年・エリックに出逢い、一目ぼれ。嵐に巻き込まれ、海に投げ出されたエリックをアリエルは必死の思いで助けます。

海の王国の者が人間を助けるのは掟に反すること。海の王であるトリトンはアリエルを厳しく戒めますが、彼女は耳を貸さず、人間になることを願い始めます。

そのアリエルの気持ちにつけこんだのは、海の魔女と言われるアースラ。実は彼女はトリトンの実の姉なのですが、ひねくれて悪賢い性格だったために弟に追放され、恨みを持ったまま、深海を根城としていたのでした。

アリエルに人間の足を与えることと引き換えに、彼女の美しい声を代償として差し出すようにと迫るアースラ。そして、人間となって3日目の日没までにエリックがアリエルにキスをしなければ、アリエルは永久にアースラに囚われてしまう、という条件までつけます。アースラはアリエルの身を人質にとり、トリトンから力を奪おうと画策していたのでした。

そんな事とは知らないアリエルは、エリックの傍にいたい一心からアースラとの契約に応じ、足を手に入れて人間に姿を変えます。やがてエリックに発見されたアリエルは、彼のお城へ。実はエリックはさる国の王子で、3日後に迎える自分の誕生日までに王妃を迎えなくてはならない状況になっていました。しかし、彼は嵐の日、溺れた自分を助けてくれた美しい歌声の持ち主を探していたのでした。

エリックが探し求めている相手は自分なのに、声が出さたらすぐ分かるのに。声を失ってしまったアリエルは切ない思いを抱えながら、その瞳で、表情で、ダンスで、彼に思いを伝えようとします。

エリックの誕生日の式典。声を失ったアリエルの、心を込めたダンスに、エリックはついに彼女こそが探していた女性だと気づきます。しかし時すでに遅し、アースラの魔法が荒れ狂い、アリエルとエリックは、そして海の王国はかつてない危機へと陥ります…。


【カンゲキレポ】

そうですね、ざっくりとまとめますと…

「甘やかされて育った末娘が反抗期で父親に叱られた事に逆ギレして家出するが、家族の大切さを痛感して父親と和解し、あらためて人生の新しい旅立ちに向かう」

というお話です(身もふたもない)。

でも本当に、難しい年齢の女子中学生~女子高生のお嬢さんとその家族に観ていただきたいな~と思いました。家の外の世界、新しい世界を見たいと願う娘、そんな娘を心配しながらも上手く伝えることのできない親…そんなもどかしさが第1幕ではよく描かれていました。第2幕ではそんな父と娘が解り合うことができて、ホッとしました。

アースラの悪女っぷりも相当のもの。何だか諸悪の根源は全て彼女に、みたいな描かれ方はちょっと短絡的では、と思いましたが、とにかく気持ちが良いくらいの見事な悪女ぶりでした。アースラに仕えるウツボのコンビ、フロットサムとジェットサムもそこはかとない不気味さがジワジワ来ます。

そうそう、ある場面でアースラが登場し、スポットを浴びてキッと客席を睨み据えるようにポーズを決めた瞬間、幼いお子さんが、火がついたように大泣きし始めました。それがまた、狙いすましたのかと思えるほどに絶妙なタイミングで、客席中が静かに頷いていました(笑)。うんうん、わかるよ……アースラ、怖いよね…(^^ゞ。

飯野おさみ、荒川務の幹部俳優陣は、さすがのオーラと華です!飯野は「歌の聴かせどころ」をきちんと心得ているし、荒川は往年と変わらないキレ味鋭いダンスで、素晴らしかったです。また、シェフ・ルイを演じた清水大星が、実力のある歌唱とユニークな演技で、客席の注目と笑いを誘いました。

他のキャストからは、それらがなかなか伝わってこなかったのは残念。技量は非常に優れていますが、客席を、劇場を包み込み圧倒するようなオーラは感じられませんでした。「等しいレベルでひとりでも多くの観客に作品のメッセージを伝える」、「当たり役を作らず、どの俳優がどの役を演じてもその作品のレベルが維持される」のが劇団四季最大のモットーなので、それはそれでひとつの正解だと思います。

ミュージカル『リトルマーメイド』最大の特色とも言える「海の世界」の演出は、鮮やかな色彩とゆらめく照明技術、そして俳優陣の柔らかな動きで見事に表現されていました。ワイヤーで吊り上げられながらの演技や歌はとても大変だろうと察しますが、さすがに順応性が高い四季の俳優の皆さん、全く問題にせず演技されていました。

特にアリエルが海中に沈んでいくエリックを助けて海上へ引き上げようとする場面、アースラと契約して人間の足を手に入れたアリエルが必死で海上を目指して泳いでいく場面は、夢のような幻想的な光景でした。

紗幕越しにゆらゆらと照明が舞台全体に当たり、その中をワイヤーに吊るされた俳優がのびやかに尾ひれを揺らめかせながら、後者の場面では尾ひれから変身して手に入れた足をばたつかせながら上昇していく…その一連の美しさに、心の底から感嘆しました。

衣装に使用されている色合いや色彩バランスが、何となく『アイーダ』に似ているなぁと思っていたら、やはり同じデザイナー(ボブ・クローリー)によるものでした。懐かしいなぁ~!『アイーダ』、もう一度観たいミュージカルのひとつです。(→その時のレポはコチラから。もう9年も前の事!月日が経つのが早すぎる…)

第1幕ラストで声と引き換えに人間の姿を手に入れたアリエル、第2幕は全く歌ったりしないのかな?と思っていたら、彼女の心の喜びや切なさを表現する「心の声」として、その美しい歌声を存分に聴かせてくれました。この演出は成程流石だな、と感心。むしろ、地に足がついてしっかりと重心を保って歌えるからか、第2幕の方が高音により一層の安定感が出ていたように思います。


***


終演後、劇場からの帰り道で、『リトルマーメイド』のプログラムを手にしたご婦人が、しみじみとお連れの方に語っているのが聞こえてきました。

「『子はかすがい』って言うけどね、女の子はかすがいにもならないわよ~。結婚しちゃったら、もう便りもないわよ」。


……トリトンお父さん……。(´・ω・`)ドンマイ… ←子ども全員、女の子


ついつい、家族のあり方について考えてしまうディズニーミュージカル、『リトルマーメイド』でした(笑)。





『リトルマーメイド』 12月9日の出演者

アリエル:小林由希子
エリック:神永東吾
アースラ:原田真理
トリトン:高橋基史
セバスチャン:飯野おさみ
スカットル:荒川務
グリムスビー:田島康成
フランダー:大空卓鵬
フロットサム:有賀光一
ジェットサム:中橋耕平
シェフ・ルイ/リーワード:清水大星

男性アンサンブル:名児耶洋、成田蔵人、菱山亮祐、野村数幾、光田健一、劉昌明
女性アンサンブル:中田成美、山本詠美子、三井莉穂、倉斗絢子、長野千紘、西浦歌織、染谷早紀

 


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コメント 2

ラブ

身も蓋もない解説、ありがとうございますw。
「アイーダ」よかったですよね。心に残ってます。
by ラブ (2015-12-11 11:08) 

★とろりん★

ラブさま

nice!とコメント、ありがとうございます。

身も蓋もなさすぎて、すみません(笑)。舞台効果や装置はさすがディズニー!という鮮やかさでしたよ。

『アイーダ』、良かったですね。今は上演をお休みしているようですが、いつかまた観たいな~、主役の3人に会いたいな、と思います。
by ★とろりん★ (2015-12-12 22:44) 

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