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稲越功一作品展 「播磨屋 一九九二-二〇〇四 中村吉右衛門」 [歌舞伎]

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2015年11月3日(火・祝)~11月29日(土)
JCIIフォトサロン

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国立劇場の最寄駅、東京メトロ「半蔵門」駅に近いフォトサロンで、中村吉右衛門丈の写真展が開催されていたので、足を延ばしてみました。

写真家・稲越功一(1941~2009)が、1978年~2004年の間、30年以上にわたって撮影し続けた吉右衛門丈の写真作品のうち、1992年~2004年にかけて撮影された作品、約60点(全てモノクロ)が展示されています。

心地良い空間にバランス良く展示されている写真は、どれも播磨屋の舞台に懸ける情熱と思いの深さが手に取るように伝わってきて、凄みと迫力が違います。

写真として撮影されているのは、以下の作品とお役。


『近江源氏先陣館』 佐々木盛綱
『妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん)』 大判事
一谷嫩軍記(いちのたにふたばぐんき)』 熊谷直実
『松浦の太鼓』 松浦鎮信
天花粉上野初花(くもにまごう うえののはつはな)』 河内山
時今也桔梗旗揚(ときはいま ききょうのはたあげ)』  武智光秀
『増補双級巴(ぞうほふたつどもえ)』 石川五右衛門
『勧進帳』  弁慶/富樫
『義経千本桜 大物浦』 平知盛
『双蝶々曲輪日記(ふたつちょうちょう くるわにっき)』 濡髪
『仮名手本忠臣蔵 七段目/十一段目』 大星由良之助
『色彩間刈豆(いろもようちょっとかりまめ)』 与右衛門
『ひらかな盛衰記』 樋口兼光
『鬼一法眼三略巻(きいちほうげんさんりゃくのまき)』 一條大蔵卿
『奥州安達原』 安部宗任
『土蜘』 智籌
『身替座禅』 山蔭右京
『敵打天下茶屋聚』 元右衛門
『昇龍哀別瀬戸内(のぼるりゅう わかれのせとうち) 藤戸』 老母藤浪/漁夫の霊
『巴御前』 巴御前/木曽義仲の霊
『平家女護島』 俊寛
『梶原平三誉石切』 梶原平三


ざっとご覧いただいてもわかるように、まさに、写真で1992~2004年の間、12年にわたる吉右衛門丈の舞台での歴史が、そのまま写真となって息づいているように思えるのです。

「これぞ播磨屋!」と言われる当たり役は勿論、「へぇ、このお役もなさったんだぁ」とちょっと意外なお役(『かさね』の与右衛門を勤めていらっしゃるのは初めて知りました)、ご本人が台本を書いた作品、12年間の吉右衛門丈の来し方を写真を通じて感じることが出来ました。

作品には、それぞれキャプションで文章が添えられているのですが、「俊寛」に添えられていた文が心に残りました。

「俊寛」は、長らく上演が途絶えていたものを、吉右衛門丈の祖父でもあり、養父でもあった初代吉右衛門が復活させたのだそうです。

―演じることで、初代との、対話をかさねてきた。それが「俊寛」なのだ。-

俊寛は観るのにとてもつないエネルギーを要する舞台ですが、吉右衛門丈の俊寛は、見るたびに心を震わされるのです。やっぱり、丈にとっても大切な、大切なお役なのですね。この文を読んで、やっぱり歌舞伎って凄いな、素晴らしいなと思いました。

どの写真も本当に惚れ惚れするほど丈の魅力があふれていますが、個人的に心に残ったのは、富樫、藤浪、大蔵卿、土蜘、松浦の殿さま、そして俊寛の写真です。

藤浪と土蜘は、闇との対比が素晴らしい。富樫、俊寛、大蔵卿は、並々ならぬ決意と覚悟を感じさせる強い眼差しに心を貫かれ、松浦の殿さまの、写真でも伝わってくる鷹揚さに心和みます。

サロン内には、稲越氏が愛用したカメラの同型品、愛用のスニーカー、著書なども展示されています。『百一人の肖像』(求龍堂、2007年)には、素顔で撮影された吉右衛門丈の写真掲載ページが開かれて展示されています。穏やかな表情に中に見える、揺るぎのない光…。このお写真も好きです。

写真展は、今度の日曜日まで開催中。播磨屋贔屓の方も、歌舞伎ファンの方も、写真が好きな方も、たくさんの方に見ていただけますように!


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