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ミュージカル 『エリザベート』 [そのほか舞台]

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2015年7月19日(日) 帝国劇場 13:30開演

脚本/歌詞:ミヒャエル・クンツェ
音楽/編曲:シルヴェスター・リーヴァイ
演出/訳詞:小池修一郎


【キャスト】

エリザベート:花總まり
トート:井上芳雄
フランツ・ヨーゼフ:田代万里生
ルドルフ:京本大我
ゾフィー:香寿たつき
ルイジ・ルキーニ:山崎育三郎
少年ルドルフ:池田優斗


【あらすじ】(フライヤーより)

19世紀末のウィーン。若き皇帝フランツ・ヨーゼフが我が妻にと選んだのは、自由な心と魂を持つシシィ(エリザベート)だった。一目で惹かれ合い、固い絆で結ばれたかに見えた2人だったが、その愛はハプスブルグ王朝の破滅への始まりだった。

自由を愛するエリザベートにとって、宮廷での暮らしは苦痛以外の何ものでもない。姑の皇太后ゾフィーが取り仕切る宮廷では、自身の子供を自ら養育することも叶わなかった。

ある日、自分の美貌が武器になることに気付いたエリザベートは、自らを完璧に磨き上げ、ハプスブルグ帝国の皇后として栄華を極めていく。エリザベートが念願としていた望みを叶えたのも束の間、彼女のまわりには、夫の不義、国民の誹謗中傷、愛する皇太子ルドルフの死と、常に不幸の影がつきまとう。

そして、それらの不幸と共に彼女の目の前に現れるのが黄泉の帝王"トート=死"。トートはエリザベートが少女の頃から彼女の愛を求め続け、彼女もいつしかその愛を意識するようになっていた。しかし、その禁じられた愛を受け入れることは、自らの死を意味することも、エリザベートは知っていた。帳が下りる帝国と共に、エリザベートの"運命の日"は迫っていた…。


【カンゲキレポ】

初めての帝国劇場潜入が、この『エリザベート』であったこと。初めて出会う帝国劇場の舞台が、花總まりの『エリザベート』であったことに、今でも無上の喜びをかみしめています。

「おおお、6世梅幸丈が牽引された帝国劇場に、ついにやってきた…」と感慨深い思いとともに足を踏み入れた帝国劇場。座席は柔らかいし、2階席からも舞台が思っていた以上に近く見えて、「観る」ことに集中ができる劇場ですね。

その帝国劇場で観劇した『エリザベート』。今まで宝塚歌劇の『エリザ』は1998年宙組、2002年花組、2009年月組、そして2014年花組と観劇しましたが、東宝版の『エリザ』は初観劇。

演出も宝塚と同じ小池修一郎先生ということで、大幅な変更などはないだろうと思っていましたが、東宝版の方が、随所によりリアルな演出がされていて、さらに政治的な演出も遠慮なく入っていました。やっぱり宝塚は「ファンタジー」な世界観が第一なんだなぁと実感しましたし、宝塚版と東宝版で明確に細やかに演出を分けた小池先生には脱帽です。

また、宝塚版では上演時間の事情などからカットされたのであろう場面や歌唱が入っていたので、それぞれのメインキャストの人物像と関係性が、より深く重厚に描かれていたように思います。



タイトルロール、エリザベートを演じた花總まり。

言葉はありません。

宝塚時代からの役への集中力はさすが。今回は圧倒的な舞台姿だけでなく、「人間」としてのエリザベートの感情のうねりを少女時代から晩年まで、途切れさせることなく見事に表現し、完璧に「エリザベート」として舞台に存在していました。

圧倒的な美しさと輝きと神々しさでフランツ・ヨーゼフだけでなく劇場中をひれ伏させる鏡の間は言うまでもありませんが、花總の真骨頂を感じたのは、第2部の精神病院の場面と、「パパみたいになりたかった…」と歌う、コルフ島での場面。

自由を渇望し、自由を求めて闘い続けてきた結果、得たものは孤独だけだった…という悔恨とも悲痛ともつかない慟哭に、エリザベートの哀しさが真っ直ぐに伝わってきて胸を衝かれました。

それだけに、ようやく真の自由を得た最期の場面での、全てを削ぎ落としたかのような透明な微笑みが心に残ります。

カーテンコールも、もう、後光が射しているかのような眩さ!!

花總まりは、日本演劇界の「女神(ミューズ)」に違いない、恥ずかしげもなくそう確信してしまうほどの、圧巻の舞台でした。



ちなみに、この精神病院の場面でヴィンディッシュ嬢を演じているのは、宝塚OGの真瀬はるか。今回の舞台では、リヒテンシュタインを演じた秋園美緒、ルドヴィカ/マダム・ヴォルフを演じた未来優希、家庭教師を演じた七瀬りりこ、美容師(たぶん…)を演じた百千糸など、かつて宝塚歌劇の舞台を支えてくれた実力派の卒業生も多く出演していて、懐かしく、また頼もしく思いました。



井上芳雄のトートは、若き黄泉のプリンスと言う若々しさ、雄々しさもありながら、「閣下」と呼ばれるに相応しい風格と存在感。そしてハリと伸びのある美しい高音!

私は、トートがシシィに惹かれる一瞬のシーンがすごく好きでした。イントロから唄い出しまでの短い瞬間に、一瞬で彼女に惹かれてしまう様子をきちんと表現できるのは凄いと思います。

あと、トート閣下はじめ、黄泉の国の皆さんはセクシー&ワイルドで統一されていて、出て来るたびにドキドキしちゃいました(笑)。キャッ(*ノ▽゚)ゝチラッ



フランツ・ヨーゼフを演じた田代万里生。特に晩年の孤独感は、胸に迫るものがありました。「私の目で見てくれたなら…」という歌声が、今でも切なく甘く胸に響きます。



香寿たつきのゾフィー。タータンの舞台を拝見するのは、彼女の宝塚サヨナラ公演以来ですから、実に13年ぶり。

タータン(香寿)、やっぱり巧い!低音も美しく響くし、滑舌もはっきりしているので、芝居でも歌でも何を言っているのかちゃんと耳に入ってきます。変わらない実力を保ち続けているタータンの姿、本当に嬉しく思いました。

東宝『エリザ』では、ゾフィーに感情移入してしまいましたね。「宮廷でただ一人の男」と称されるように、まるで軍服を模したかのようなドレスをまとっています。その裾には、金糸でハプスブルグ家の紋章「双頭の鷲」が豪華に刺繍されています。このドレスが、エリザベートに屈してしまう第2幕にどのように変化するのか、ポイントです。

誰にも、息子にさえも隙を見せなかった彼女が、「宮廷でただ一人の男」として立ち続けたのは、たったひとつの「愛」を守り通すためだった…。秘め続け、押し殺し続けた思いをようやくに口にする最期の場面は、本当にやる瀬なくて悲痛で、涙があふれました。

そう、『エリザベート』は、「愛と死の輪舞」なのですよね。

メインキャストの誰もが自分なりの「愛」を抱き、自分の中にある「愛」の為に闘い続け、そして「愛」のために破滅し、「愛」のためにすれ違い、「愛」のために彷徨い続ける…。

それぞれの「愛」が行き場なく交錯し、すれ違いながらも互いに「愛」を求め続け、自分が死を迎える事でしか終わりを告げられない…まさに「輪舞(ロンド)」のように繰り返される、「愛」の連関。



皇太子ルドルフを演じたのは、ジャニーズjr.の京本大我くん。日本ミュージカル界の綺羅星と言っても良い程のキャスト陣に囲まれての出演ですが、とてもよく頑張っていたと思います!(←親戚のおばちゃん目線全開)

トート(井上)とのデュエット「闇が広がる」もよく歌えていました。圧倒的な歌唱力を誇る井上くんが巧みにリードしてくれるので、大我くんも自信を持って声を出せるのだと思います。感謝申し上げます、閣下…!

素晴らしかったのは、革命家にまつりあげられて決起した暴動を鎮圧され、警官の尋問を受ける時の表情。

「ルド…ルフ……(「姓は?」)…ハッ……ハプス……ブル…グ…」

乾いた口元からその名が零れ落ちる瞬間の、壮絶なまでに蒼白な横顔。宙を彷徨うガラス玉のように美しく、けれど何も映していない瞳。人が全てを失った時、心の底から絶望した時、きっとこんな顔をするのだろう…と、観ているこちらの心も凍りつきました。

その後、軍服から白シャツとなって踊る(=トートダンサーに踊らされる)場面も、シャツの眩しいほどの純白が、何もかもを失ったルドルフの絶望を象徴しているかのようで、胸が押しつぶされそうでした。



ルイジ・ルキーニを演じた山崎育三郎。

今回、ワタクシの心を撃ち抜いたのは、この方でした(笑)。あれだけ自在にルキーニを演じられる役者さん、初めて観たかも!パワフルな歌声で、お芝居をぐんぐん引っ張っていました。

時に狂気じみた芝居や歌い方を見せても、決してやりすぎることがないので、舞台が破たんしたり、客席が白けたりすることがないのですよね。客席と舞台の「適度な距離感」のつかみ方が抜群に巧い俳優さんだと思います。

幕間に、売店で売られていた「あめさぶろー」(オフィシャルグッズのキャンディ)を買おうかどうしようか、真剣に悩んでいたのは、ここだけの秘密です(笑)。


* * *


文字通り、「日本ミュージカル界の至宝」とも言える俳優達によって演じられた珠玉の舞台。この舞台をこキャスティングで観劇できたこと、心の底から幸せに思います。


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ラブ

おお、帝劇。行ったことないですけどw。

by ラブ (2015-07-22 15:55) 

★とろりん★

ラブさま

nice!とコメント、ありがとうございます。

ね、やっぱりそうですよね。「おお、帝劇」って思いますよね。
私もまさに「おおお…帝劇…」と半ば怯みかけつつ入りました(笑)。
by ★とろりん★ (2015-07-22 23:24) 

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